1-15. 終~Epilogue~<R-18>

唇を何度も重ねる

まるで二人の明日が来ないかのように

永遠に今だけを求めるかのように

 

おまえはキスをしたまま

シーツに包まった私を抱え上げ

ベッドに横たえる

 

「おまえ…身体は大丈夫なのか?」

私をまっすぐ見つめる瞳

風に当たって冷えた身体を心配してくれている

 

「…大丈夫」

私は両手を伸ばしおまえを求める

 

私にのしかかるおまえの重み

温かい息が首にかかる、耳元で囁く

「愛しているよ…いつまでも限りなく…」

 

私は無言で頷きおまえに言う

「私も愛している…もう一人では生きられない…」

 

お前は私を見つめる

黒曜石色の瞳から涙が零れる

…私も泣いていた…

 

切なくて哀しくて愛おしい

心だけで処理しきれない感情が涙になって現れる

 

互いが互いの涙を拭いあう

拭ってもらうのが不思議と嬉しくて、そんな自分が可笑しい

おまえも同じ気持ちみたいだ

私たちは額と額を重ね合わせ、ただ笑う

 

シーツの上から重なるおまえの体温

私の肩を温めるおまえの左手

私をじっと見つめる視線

 

「そんなに見るな…恥ずかしいではないか」

 

おまえは笑う

「俺にしか見せない顔は俺だけに見る権利があるんだよ」

 

うん、確かにそうだ…そうだけど…

私はシーツを引き上げて顔を隠す

おまえは慌てて引き下げようとする

 

力ではおまえにはかなわない

おまえもそれを分かって手加減をする

子供みたいにじゃれ合う

 

何度目かおまえがシーツを引き下げた瞬間

私はシーツから手を離しおまえの頬に手を添える

「もう…温かくなったよ…」

 

その言葉でおまえの左手が私の身体からシーツをはがしていく

巻きついたシーツが私の身体に引っかかり

そのまま私の身体がおまえに覆いかぶさる

 

おまえの胸に顔を埋める

おまえの心臓の音が聞こえる

私の心臓の音と重なり合う

 

おまえは私の背中越しにシーツをかける

すっぽりかぶったシーツの中で私たちは重なり合った

 

「キスをしてくれないか?」

おまえがいう

 

私は少し起き上がりベッドに肘をつく

シーツの中ではおまえの顔は見えない

指先でおまえの顔を探る

 

額…眉毛…長いまつげ…すっと伸びた鼻

…そして唇

おまえの頬に両手を添える

そっとキスをした

 

「もっとだ」

そういうと私の膝を割ってはいるおまえの膝に

身体を持ち上げられ

私はおまえの身体に馬乗りになる

 

私の腰に回した手が這うように動く

私の腕の力が抜けてゆく

 

おまえに強く引き寄せられ唇を重ねる

 

熱い…

 

何とか起き上がろうと腕に力を込めるが

おまえは容赦なく私を追い詰める

 

私の首筋を…胸を…その唇で弄ぶ

 

「…あ…やめ…」

 

「やめないよ…」

そして…おまえは私の腰を持ち優しく誘導する

私はおまえの腰にゆっくりと沈み込む

 

「あぁ…」

おまえの熱いものが私を突き上げる

私は完全に征服される

 

おまえにされるがままに…

 

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おまえの中は熱く…そして狭い…

 

俺は動くたびにおまえの波に飲み込まれないように

気をそらす

 

そのためにおまえの敏感な場所を探り当てる

 

おまえは恍惚の表情を俺に見せる

その顔は俺だけに見せる俺だけのもの

 

「…くっ…」

ダメだ…おまえに集中すればするほど

俺の沸点が近づく

 

おまえが馬乗りになっていることが問題だ…

俺はおまえの身体を抱えベッドに押し付ける

 

俺にされるがままに身を任せる

 

繋がったまま、おまえの熱くなった突起に触れる

おまえの吐息が言葉にならない喘ぎと共に漏れる

 

スプリングの良い柔らかいベッドの上

俺はおまえの腰に枕を添える

 

さらに深くおまえに入っていく

おまえの奥にある壁に突き当たる

 

俺たちは互いを求め合い生きていく

今までもこれから先もこうして光と影のように寄り添いあって生きていく

生まれてきて良かったと…心のそこから思う

 

静寂の中におまえの吐息と喘ぎが響き渡る

 

「…あぁ…波が…」

そう言っておまえは果てた

 

そして、俺もおまえの波と共に果てる…俺の全てをおまえの中に…

 

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おまえの胸の中で朝を迎える

 

心地の良い目覚め

こんなにもよく眠れたのは久しぶりだ

 

今日から私は自由、平等、博愛の名のもとに

私は何の悔いもなく新しい人生を歩んでゆける

 

隣に眠るこの愛おしい人と一緒に…

 

窓から差し込む朝日に祈りを込める

 

そしてもう、二度と戻ることはないだろうこの部屋に

さよならを告げる

 

アデュ…永遠に…